IP無線機とMCA無線機の違いは?仕組みや値段などをまとめて解説
MCA無線機とIP無線機の違いとは。またそれぞれの強みをご紹介
現在は通信距離や利用用途に合わせた様々な種類の無線機が販売・レンタルされています。
初めて無線機を導入する場合は違いが分からず、どのタイプを選べば良いのか悩む方も多いのではないでしょうか。
ここでは、主に広域での通信を行う場合に有効な「IP無線機」と「MCA無線機」についてご紹介。
IP無線機とMCA無線機には距離や料金などの部分で違いがあります。
IP無線機とMCA無線機それぞれの特徴や違いを比較し、状況に応じて適した無線機を選択できるようにしましょう。
IP無線機とMCA無線機の仕組みの違い
IP無線機とMCA無線機はどちらも広域エリアでの通信に適した無線機です。
お互いの距離が30km以上離れている場合でも、安定した通信が行えるという共通の特徴があります。
一方で、通信の仕組みや使い勝手の部分には大きな違いもあります。
まずはIP無線機とMCA無線機それぞれの特徴や仕組みの違いを見ていきましょう。
IP無線機とは
IP無線機とは、大手通信事業者の所有するインターネット回線を利用して無線通信を行う無線機のことです。音声をパケットデータに変換することで通信を行う仕組みになっています。
IP無線機には以下のような特徴があります。
- 通信距離の制限がなく全国で利用できる
- 通信が暗号化されているため混信トラブルが起きない
- 免許や資格を取得する必要がない
従来の無線機は、相手の無線機が発している電波をキャッチして通信を行う仕組みです。
そのため通信可能な距離に上限があり、一定の距離を超えてしまうと通信が不安定になったり、繋がらなくなったりするといった弱点がありました。
一方でIP無線機は携帯電話のインターネット回線を利用しているため、携帯電話の電波が入るエリアであれば全国どこにいても通信が可能です。
障害物などの影響を受けることもないので、IP無線機なら快適で安全な通信を行うことができるでしょう。
またメールやインターネットと同じく、IP無線機では暗号化されたデータでの通信が可能。
従来の無線機とは違い、混信による傍受や盗聴などのトラブルも心配ありません。
特別な免許や資格を取得する必要もなく、誰でも簡単に使い始められるのもIP無線機の特徴です。
MCA無線機とは
MCA無線機とは、中継局を介して通信を行う無線機のことです。
相手の無線機と直接電波の送受信を行うタイプの無線機とは違い、全国に設置された中継局を経由して通信を行う仕組みとなっています。
MCA無線機には以下のような特徴があります。
- 契約内容によっては全国での通信が可能
- 専用の通信網を利用するため混信や回線の混雑が起きない
- 免許の申請のみで利用できる
MCA無線機の中継局は全国に114か所設置されており、1か所の契約につきいくら、という形で計算されます。
1つの中継局で20km~40km程度のエリアをカバーでき、契約次第では全国での通信も可能。
アンテナの設置など初期費用がかかる業務用無線機と違い、MCA無線機ならすでに設置されている中継局を利用できるので余計なコストがかかりません。
またMCA無線機の中継局では、利用者に対して自動的に空きチャンネルを割り当てる形で通信を行います。
限られたチャンネルをスムーズに振り分ける必要があるため、IP無線機と違いMCA無線機では1回の通信時間が3分~5分に制限されています。
長時間の通信は行えませんが、混信や回線の混雑といったストレスを抱えることなく通信ができるのがMCA無線機の特徴です。
MCA無線機は中継局に無線従事者が配置されているため、業務用無線機と違い利用者が従事者免許を取得する必要はありません。
ただし、無線局の免許のみ取得・更新が必要となるので、契約の際は手続きを忘れないように注意しましょう。
IP無線機とMCA無線機の違いを比較
IP無線機とMCA無線機には通信の仕組みや特徴などに違いがあることが分かりました。
続いて、それぞれの機能や料金などの違いを比較しながら詳しく見ていきましょう。
通信距離
IP無線機とMCA無線機はどちらも広域エリアでの利用に適した無線機です。
IP無線機は特別な手続きを行わなくても、携帯電話の電波が届くエリアであれば全国どこでも通信が可能。
3G・4G・LTEをはじめ、Wi-Fi(ワイファイ)でも接続できます。
全国に支店を置いている場合や、長距離トラック・バスなど移動の多い業種におすすめ。
MCA無線機は中継局の契約数によって通信距離が違います。
1つの中継局のみを利用する場合は20km~40km程度のエリアに限定されますが、複数の中継局を経由できるようにすれば全国での通信も可能です。
ビジネスの規模などに合わせて調整できるのがMCA無線機の特徴となっています。
IP無線機 | MCA無線機 | |
---|---|---|
通信距離 | 全国 | 20km~ |
通信できる条件 | 携帯電話の電波が入るエリア | 中継局がカバーしているエリア |
利用用途
IP無線機は通信距離の制限がなく、障害物などの影響も受けないため、様々な業種で活躍できる無線機です。
IP無線機は以下のような業種・シーンで役立ちます。
- 長距離トラック・バス
- タクシー
- 野外フェスなどの大規模イベント
- 災害時・緊急時
高速道路を使って長距離移動を行うトラックやバスの場合、悪天候や事故による渋滞などで到着が大幅に遅れる可能性があります。
IP無線機を所持していれば、到着先のお店や自社のセンターへ迅速に連絡を行うことが可能です。
また後ほどご紹介しますが、IP無線機にはGPS機能が付いているものが多く、発信者の位置情報を素早く伝えることができます。
最近ではアプリを使ったタクシーの配車予約なども普及しているため、センターとドライバーの連携がサービス向上の鍵となるでしょう。
続いて、MCA無線機の場合は以下のような業種・シーンで導入されていることが多いです。
- 公共サービス・事業
- 医療機関
- 災害時・緊急時
これは災害時に通話通信が不可能になった場合、人命がかかったケースなど緊急の際にはMCA無線機エリアでの通信を求める方が多かったためです。
しかしコスト面で割高になることやIP無線エリアの拡大により、今はIP無線に置き換える方が非常に増えてきています。
機能性
機能性の部分については、IP無線機とMCA無線機に大きな違いはありません。
どちらも以下のような機能を備えています。
- 音声通話(1対1・1対多数)
- チャンネル設定
- GPSによる発信者の位置情報管理
1対1での通話が基本となる携帯電話とは違い、IP無線機とMCA無線機では同時に複数人への発信を行うことも可能です。
操作も発信用のボタンを押すだけなので、いちいち相手の連絡先を探す手間がかからず携帯電話よりも効率的。
またGPS機能が付いている無線機も多く、発信者の位置情報をリアルタイムで送受信することができます。
現在位置を即座に把握・管理できるので、災害時の安否確認などに役立つでしょう。
サイズ・料金
IP無線機とMCA無線機はそれぞれ持ち運び可能なハンディ型や車載型、半固定型など様々なタイプが販売されています。
IP無線機は短期レンタル・長期レンタル・購入から利用方法を選択できます。
1台当たりの価格の目安は短期レンタルの場合で日額4,000円程度、長期レンタルの場合で月額3,000円程度。
購入の場合は初期費用として3,000円程度がかかります。
購入した方が割安にはなりますが、常に最新機器を利用したい方などはレンタルの方がおすすめです。
また、現在はIP無線機の機能を再現したIP無線機アプリも登場しています。
NECネッツエスアイが提供する「スカイトランシーバー」は初期費用や解約料金などがかからず、1ユーザーにつき月額1,100円(税込み)のみで利用できます。
iPhone・Androidスマホ・その他格安スマホなどにアプリをインストールするだけなので、無線機と違い機器購入の費用も不要です。
MCA無線機は業務利用専用の無線機となっているため購入、もしくは一部リースでの利用が可能です。
MCA無線機を購入した場合、1台当たりのコストを見てみると、初期費用としてハンディタイプであれば18万円~20万円前後(本体とバッテリー、充電器含む)が必要。
据え置き型のMCA無線機であれば10万円〜くらいが相場。
それに加えてランニングコストとして月額2,000−2500円程度が発生します。
まとめ
- 通信方法に違いがあり、IP無線機はインターネット回線、MCA無線機は中継局を利用している
- 料金、扱いやすさで選ぶならIP無線機、MCA無線エリアでどうしてもインターネットエリア以上でのエリアでの通信を求めるのならMCA無線機
- IP無線機はアプリ版も出ており、よりコストを抑えることができる
IP無線機とMCA無線機にはそれぞれメリットとデメリットがあります。
両方の特徴や違いを理解し、ビジネスの内容や範囲に適した無線機を導入しましょう。
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